ねーねー、クマさん。
クマさんのやってる裁判所書記官ってどんなお仕事?
何をやってるの?
裁判所書記官は、裁判でのやりとりを記録した『調書』をつくるのが主な仕事だよ
『調書』?記録?
じゃあ、速記をしている人なんだね。
う~ん、
それは速記官という別の人がやってるんだよね。
もっとわかりやすい仕事で説明すると、裁判日程の管理や裁判記録の保管も担当しているよ。
だから英語では裁判所書記官のことをコートマネージャーと言うんだよ。
マネージャーさんかぁ~。
それならなんとなくイメージできるよ。
野球部のマネージャーさんとか、芸能人のマネージャーさんとかいるよね。
じゃあ、裁判官の下で働く秘書みたいなお仕事なのかな?
ちがーう!
裁判所書記官は裁判官とは独立して仕事をする立場なんだよ。
その仕事の中で一番重要なのが『調書』をつくることなんだ。
だからその『調書』って何なのさ~!?
うーむ、仕方ない。
それじゃあ今回は書記官の大事なお仕事【調書作成】について、
くわしく説明していくよ。
よろしくおねがいします。
調書の作成
裁判所書記官といえば、調書の作成が一番の仕事です。
「法廷でのやりとりを法律的に構成した上で、
必要な事項を記載した調書を作成する」
と、言われてもよくわからないと思います。なので、刑事事件の調書を実際に作ってみました。
公判調書ってこういうものです。他にもいろいろあるけど、分かりやすいものにしています。
ちなみにこれは『公判手続と調書講義案』という書籍を参考に作成しています。
しゃべった言葉をそのまま記録しているわけじゃないんだね!
…そう思いますよね。
でも、しゃべったとおりの言葉を書くこともあります。
たとえば、この被告人の最終陳述という部分は被告人がしゃべったとおりに書くことになっています。
なので、最終陳述を長く話されると、その通りに書かないといけないので、ページ数がどんどん伸びていきます。
私が書いたことのある最長の最終陳述は、A4用紙2ページ半くらいの量になりました。
もちろんしゃべったとおり逐語で書きました。
逐語というのは、一言一句そのまま書く、という意味です。
じゃあ被告人がしゃべっていることは、全部書き留めているの?
最終陳述は一言一句そのまま書きますが、その前に行われる証拠調べの一環として「被告人質問」があります。
この被告人質問では、被告人がしゃべっていることの要旨を取っているんです。
わけわかんない…
被告人質問調書の書き方として、3つの種類があります。
シンプル度 | 発言の再現度 | |
①要旨調書 | ☆☆☆☆☆ | ☆ |
②要領調書 | ☆☆ | ☆☆☆☆ |
③逐語調書 | ☆ | ☆☆☆☆☆ |
まず、①の要旨調書が一番速く書けます。
要旨調書はたとえばこんな感じ↓
1 私がやったことに間違いありません。
2 被害者の方には、本当に申し訳なく思っています。
こうやって発言の前に番号を振ることになっています。
これに対して③の逐語調書は、
検察官
今回の事件は、あなたがやったことで間違いないですか。
被告人
私がやりました。
検察官
被害者に対して、今どう思っていますか。
被告人
被害者の方に対しては、申し訳ないことをしたと思っています。
発言者と発言内容を一言一句そのまま書きます。
(余談:調書ではハテナマークやビックリマークは使いません。)
一言一句書くって結構大変そうだね
そう!とっても大変なんです。
なので、検察官と弁護人の了解を取ると要旨だけを書くことができます。
ちなみに②の要領調書も逐語調書と似ていますが、これは質問と回答を簡潔にまとめたものです。
正直、要領調書ってほぼ書いたことないです。
発言を要領よくまとめるという作業が無いぶん、逐語で書いた方が早く書けます。
調書は形式が決まっている
調書は基本の形は決まっているので、実は第1回の裁判が始まる前に8割がた作れてしまうんです。
特に、刑事裁判の調書は記載することが決まっているので、書き加える事柄は、被告人の認否と最終陳述くらいです。
民事裁判の調書も書くことは決まっているので、こちらも事前に作ることができます。
ただし…、
・答弁書は出るのか
・被告から反応はないけど出頭するのか
・もう1回裁判の期日を開くのか
・次回は、もう判決を出す期日にしてしまうのか
など、進行が若干読めないこともあります。
そのため刑事裁判のように事前にかっちりと作るのは難しいです。
調書を書く理由は?
そもそも調書ってなあに?
調書とは何かというと、法廷で行われたことを残しておく文書です。
解説書には、調書とは次のように定義されています。
公判調書は、公判期日における訴訟手続が法定の方法に従い適法に行われたか否かを公証するために、裁判所書記官が、公判期日における訴訟手続きの経過及び結果を記述して報告する文書である。
『公判手続と調書講義案』より引用
ふーん。
なんだか難しいけど、調書ってどうして作らないといけないの?
それについては以下のように説明されています。
1.公判期日における訴訟手続で公判調書に記載されたものは、公判調書のみによって証明することができる
要するに、法廷で行われたことを証明できるのは、書記官の作る公判調書だけということです。
裁判官は、この公判調書や証拠などに基づいて判決を出します。
2.裁判官が交代したときに、それまでに審理が行われたかを裁判官が把握するためにも公判調書は必要である。
裁判が終結する前に裁判官も人事異動で転勤することがあります。その後、新しく着任した裁判官は、法廷でどんなやり取りがされたのかを知るために公判調書を読みます。
3.公判の審理がにわたる場合には、公判調書により裁判官ほか訴訟関係人の記憶を確保する必要がある。
公判が長引くと、どうしても最初の頃の記憶は薄れてしまいます。調書があると、記憶の確保をすることができますね。
4.上訴が出たときに、上訴審が、下級審の判決の当否を審査するために審理の状況を知る必要がある。
裁判が高裁や最高裁に持ち込まれたときに、そもそも地裁でどんなことが行われたかを知るために公判調書を見る必要があります。
このように公判調書は裁判において、とても大事なものなのです。
そして裁判所書記官はその大事なものを作っているのです。
調書作成は書記官固有のお仕事
以上、見て来たように調書は大切な役割をもっており、調書は裁判所書記官のみが作成することができます。
したがって、裁判官や裁判所事務官が代わって作成することはできません。
それほど、裁判所書記官にとっては重要な仕事なのです。
どうかな?調書については、なんとなくイメージが湧いたかな?
なんとなくわかったよ!
でも、まだ日程調整とか裁判記録の保管の話がまだだよ?
それについては次回話していくよ。
楽しみにしていてね。
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