公務員はしょっちゅう異動があります。理由は、癒着防止だとかジェネラリスト育成のためと言われています。この記事では、裁判所の職員の異動はどうなっているのかお話しします。

異動はだいたい3年が目安
みなさんもしかしたら「公務員は3年ごとに異動する」ということを聞いたことがあるかもしれません。実際に3年が一つの目安です。3年いると自分も周りも「そろそろ異動かな」と思い始めます。
一方で、1年~2年で異動する人もいれば、5年以上同じ部署にいる人もいます。実際に私も1年8か月という中途半端な在籍期間だったこともありますし、他の人は6か月で異動してしまった人もいます。
6か月や1年だと、急な欠員など組織側の都合によることが多いようです。「ようやく仕事を覚えてきたのに…」と感じる間もなく、次の部署でまた一からスタート、ということになります。
5年以上の在籍期間になると、家庭の事情だったり本人が希望していたりと色々あります。5年だと「癒着防止って言ってなかった?」と思いますよね。私もそう思います。
書記官くまそもそも、一般の国家公務員に癒着も何も無かろう、というのが個人的な本音です。
異動範囲は、採用された高裁管内
ここでは裁判所職員一般職(大卒程度)で合格した場合の話をします。一般職採用された人は、採用された高裁管内での異動になります。管内というのは、担当する地域のことをいいます。
最高裁のホームページに、「仙台高等裁判所管内」や「東京高等裁判所管内」とありますが、これが一般職の異動する範囲になります。けっこう広範囲ですよね。
ですが、実際は都道府県ごとに採用されるので、基本は県内の異動になります。
県外異動できるのは、
・結婚した
・裁判所書記官に任官した
・管理職に昇進した
といったような限られた場合です。そういった場合でも、高裁を飛び越えての異動はありません。
しかし、管理職になった場合は。ほぼ県外に行きます。
県内だと、「自分がヒラの職員だったころを知っている人がいるからやりにくいだろう」ということで、昇進時に県外に行かせると聞いたことがあります。本当かどうか、理由はさておき、管理職に昇進イコール県外異動、となります。
そんなこと分かっていたでしょうに。
広域異動を希望しない場合は、異動面談の際に、「広域異動は嫌です」としっかり希望は伝えましょう。
高裁を飛び越えての異動もできるが、戻れない。
先ほど、高裁管内を超えての異動は無いと言いましたが、絶対にできないわけではありません。しかし、結婚や介護などの特殊事情に限られます。
実際に結婚という事情で東京から仙台に行った一般職採用の裁判所書記官や、福井から東京に来た裁判所事務官を実際に見ました。
しかし、一度高裁管内を飛び越えての異動をすると、「異動前の高裁管内に戻してほしい」「また別の高裁管内に異動したい」と言っても難しいと言われています。
なお、裁判官や家庭裁判所調査官は全国異動です。東京の次は福岡や北海道なんて、普通にあります。しかし、裁判官同士で結婚している人で、同じ県内に異動になった人もいるので、いちおう個々の事情を聞いてはくれるようです。
裁判官と裁判所書記官で結婚している人もいますが、その人達は、片方が単身赴任していたり、裁判所書記官が退職したりと、家庭によって様々です。
異動先の希望は聴取される
異動については、裁判所では異動面談というのがあります。そこで、
・どんな仕事をしたいか
・どこに行きたいか
・異動できない場所や事情はあるか
ということを聞かれます。あくまで希望なのでその通りになるとは限りませんし、だいたい思い通りにならないと思っていた方がいいです。
人事の人いわく、人事は水物(みずもの)だそうです。水物とは、運や状況に左右されやすく、予想が立てにくいもののことらしいです。
異動の際には、異動が発表される前に打診があります。ここどうですか、という打診ですね。一般職の異動の打診が2月の半ばくらいから始まるので、にわかに周囲がソワソワし出します。
異動の打診は、ひとりひとり別室に呼び出されて行われるので、仕事中に直属の上司から何か耳打ちされた人が、執務室から出ていくと、



おっ。あの人異動か?
となります。春の風物詩です。そして、職員の異動が固まると、晴れて職員全員に周知されます。これを、みなさん「異動がオープンになる」と言っています。
省庁によっては、そういう打診もなく、異動がオープンになって始めて自分の異動先を知る、というところもあるようです。検察庁は、オープンになって初めて自分の異動先を知るパターンだそうです。実際に検察事務官から聞いた話です。
一方、裁判所では異動の打診を断る人もいます。でも、拒否しすぎて挙句の果てに居座り続けて懲戒処分を食らった人もいると聞きました。更に休暇簿を破ったとかなんとか。休暇簿とは、有給休暇などを申請するときに記載する書類です。とんでもない人も居ます。
私は、いまのところ異動を断ったことはありません。だからと言って、希望が全部通ったわけでもありません。



正直、仕事内容は嫌だけど任地は希望していたとこだからな~
というキモチになったこともありました。
異動は裁判所書記官も裁判所事務官もドキドキ
異動は基本的には4月ですが、管理職は8月に異動することもあります。また、裁判所書記官任用試験で裁判所書記官になると10月に異動することもあります。
いずれにせよ、初めての場所に異動するときは緊張します。
- 仕事をちゃんとできるかな?
- その部署に馴染めるかな?
- どんな人がいるかな?
でも、皆さん優しいので、ちゃんと教えてくれますし、心配する必要はありません。分からなければ、聞けば教えてくれます。私は、未経験の仕事の場合、必ず、



この部署は初めてです!やったことありません!
といったように、未経験をアピールしまくってました。そうすると、周りのひとは、私が分からないという前提で話をしてくれるので安心ですし、「それってなんですか?」いけしゃあしゃあと聞くことができます。
それこそ、先ほど話した「こんぴ」ってなんですか??です。当然のように使われている「こんぴ」について、「こんぴって何ですか?」と聞くことで、周りの人は、「そうか、“こんぴ” が分からないのか」と気付いてくれます。
そんなこんなで、私はどんどん聞いて、できる仕事を増やしていきました。
異動は、ほぼ転職といわれている
裁判所職員のみんなが、口をそろえて言うこと。



異動って、ほぼ転職。
転職したことないけど。
例えば、初めて家事部に異動したとします。すると、



「こんぴ」成立です~。



「こうじ」の件で~。



「うむしょう」の問い合わせ来てます~。



このヒトたち、いったい何語を喋っているんだ…
なんてことになります。
「こんぴ」とは「婚姻費用分担」、「こうじ」とは「子の氏の変更許可」、「うむしょう」とは、「相続放棄の申述の有無の照会」を省略した言葉です。
今まで所属していた部署から、まったく別の部署に行くと、聞いたこともない用語がわんさか。しかもその聞いたことのない用語を省略して話されて、やはり、



このヒトたち、いったい何語を喋っているんだ…
という感じになります。提出された書類も、一体なんの書類なのかもわからない。書いてある内容の意味も分からない。という状況にもなります。
電話を受けても、何を話しているのか、何を質問されているのかもさっぱり分かりません。気分は完全に新採用裁判所事務官です!
周囲に人に聞かないと、何もできない状態になります。その都度調べていては時間がかかりますし、窓口で待っている人もいます。それに、調べたくても、何をどうやって調べればいいのかもわからないので、さっさと人に聞きます。
皆さん快く教えてくれるのでとりあず質問してその場をしのぎます。そして、落ち着いたら調べる、ということの繰り返しになります。忙しすぎると調べる時間も無かったりしますが・・・。
裁判所書記官なら初めてでもすぐに仕事ができる?



でも、裁判所書記官は研修所で研修を受けているから、
異動先の仕事が分からないなんてことあるの?
と、思うでしょう??
分からないんですよ。これが。
裁判所事務官としての経験がある部署に行くことができれば、スムーズに仕事に取り組めます。しかし、一度も行ったことの無い部署だと、気分は新採用裁判所事務官。
研修所で学習はしているのですが、私は研修期間がトータル3か月程度と短かったこともあり、裁判所事務官時代に未経験だった仕事は大苦戦しました。なにせ研修所のスタンスが「あとは現場で覚えてね!」ですからね。
1年~2年かけて行う研修でどれくらい違いが出るのかは正直分かりませんが、私の印象としては、しっかり研修して任官した裁判所書記官は、あまり苦戦しているようには見えませんでした。見えなかっただけかもしれないけど。
そして、裁判所書記官が異動して一番大変なこと。それは、担当する事件の把握です!
裁判所書記官は、それぞれに担当する事件があるのですが、異動初日から事件に関しての問い合わせが容赦なく来ます。もちろん異動したばかりなので、担当する事件の内容なんて把握していません。



異動してきたばかりで、事件の内容を把握していません。申し訳ありませんが折り返し連絡します。
という常套句を連発してその場をしのぎます。
「異動してきたばかりなので、事件の内容を把握していない」って言って良いの?って思うかもしれませんが、異動してきた人、みな言ってます。
異動は、裁判所事務官も裁判所書記官もみんな大変です。
仕事の引継ぎは、引き継ぎ書を見る
「事件の内容を把握していないなんて、引継ぎはどうなってるの?」と思うでしょう。ハイ。引継ぎは、基本的に前任者が作った引き継ぎ書を見ます。
しかし、その引き継ぎ書も担当事件すべてを網羅しているわけではなく、要注意事件や長期化している事件の説明をしていることがほとんどです。なので、まあ、ほとんど良く分かりません。特に未経験の部署の引き継ぎ書なんて読んでも意味わかりませんからね。
裁判官が残ってくれていれば、裁判官が把握しているので裁判官から聞くのもアリです。どうしても分からなければ前任者にメールやチャットで聞くくらいです。
異動後に前任者が来て引継ぎをしてくれるなんてことはありません。異動前に引継ぎをしに行く・引継ぎをしに来るなんてこともありません。裁判所はそういうスタンスですが、別の行政の国家公務員は異動後に前任者がきてくれるところもあるみたいです。
異動先が同じ建物であれば、事前に「仕事を見せてください」とお願いして見に行くことはあります。裁判所事務官も、同じ建物であれば連絡をして、仕事を見に行くこともあります。



しかし、裁判所事務官の場合は、どの部署もマニュアルがあります。
マニュアル改訂も、裁判所事務官の仕事の一つです。
また、部署に関わらず共通している仕事(物品の請求など)は、他の部署の事務官に聞くこともできます。小さい部署であれば、裁判所書記官が把握していることもあるので、いろいろな人に聞いてみましょう。
管理職は有給休暇を取って異動先に引継ぎをしに行くことが多いです。有給を使って仕事をしに行ってます。
異動先が希望部署だと、意外と楽しい
異動はドキドキですが、希望部署に行くと仕事が楽しかったりします。私は刑事部に居ることが多かったのですが、刑事部の仕事は楽しかったです。
やり取りも弁護人や検察官などのプロ同士です。説明せずともだいたい分かってくれるので自分の仕事に集中できました。もちろん毎日ハッピー!という訳ではありませんが、仕事の相性が良かったんですよね。
私が配属された部署は、裁判所事務官時代も裁判所書記官時代も激務部と言われている場所でした。しかし、激務な部署に来る人って配属される職員に変な人がいないんですよね。裁判官や職員は良い人が多かったです。
当時の先輩いわく「変な人が来たら部の仕事が回らないからね」なんて言っていました。裁判所書記官になって「その通りだな」と思いました。
まぁ、過去は美化されるというか、喉元過ぎれば熱さを忘れるというか。当時は大変でしたが、相対的に見て刑事部の仕事は楽しかったです。
まとめ
初めての部署は誰でも不安なものですが、「初めてです」と素直に言える人の方が意外と早く馴染めます。異動を乗り越えるたびに、自分の仕事の幅が広がっていくはずです。
用語も書類も電話対応も、一からのスタートになることが多いですが、周りの人に積極的に聞くことで着実に仕事を覚えていけます。
皆さんも、どんどん聞いて、調べて、できる仕事を増やしていってほしいと思います。








コメント