公務員は、だいたい3年ごとに異動があります。
癒着防止やジェネラリスト育成のためと言われています。
ここでは、裁判所の職員の異動はどうなっているのかお話しします。
異動は、ほぼ転職
裁判所職員のみんなが、口をそろえて言うこと。
異動って、ほぼ転職。
転職したことないけど。
例えば、初めて家事部に異動したとします。
すると、
「こんぴ」成立です~。
「こうじ」の件で~。
「うむしょう」の問い合わせ来てます~。
このヒトたち一体何語を喋っているんだ…
なんてことになります。
ちなみに「こんぴ」とは「婚姻費用分担」を省略、
「こうじ」とは「子の氏の変更許可」を省略、
「うむしょう」とは、「相続放棄の申述の有無の照会」を省略した言葉です。
このように、今まで所属していた部署から、まったく別の部署に行くと、
聞いたこともない用語がわんさか。しかもその聞いたことのない用語を省略して話されて、やはり、
このヒトたち一体何語を喋っているんだ…
という感じになります。
提出された書類も、一体なんの書類なのかもわからない…書いてある内容の意味は??
という状況にもなります。
電話を受けても、何を話しているのか、何を質問されているのかもさっぱり分かりません。
気分は完全に新採用事務官です!
ですので周囲に人に聞かないと、何もできない状態になります。
その都度調べていては時間がかかりますし、窓口で待っている人もいます。
それに、調べたくても、何をどうやって調べればいいのかもわからないので、さっさと人に聞きます。
質問しても、皆さん快く教えてくれます。とりあず質問してその場をしのぎます。そして、落ち着いたら調べる、ということの繰り返しになります。
書記官なら初めてでもすぐに仕事ができる?
でも、書記官は研修所で研修を受けているから、
異動先の仕事が分からないなんてことあるの?
と、思うでしょう??
分からないんですよ。これが。
事務官としての経験がある部署に行くことができれば、スムーズに仕事に取り組めます。
しかし、一度も行ったことの無い部署だと、気分は新採用事務官。
とはいえ、研修所で学習はしているので本当に新採用事務官という訳ではありませんが、私は正直ほぼ分かりませんでした。
私は研修期間がトータル3か月程度と短かったこともあり、事務官時代にやったことのある仕事以外は大苦戦しました。
書記官の研修を1年~2年すると違うのかは分かりませんが、私の印象としては、あまり苦戦しているようには見えませんでした。
みんなすごいなぁ、なんて思っていました。
そして、書記官が異動して一番大変なこと。
それは、担当する事件の把握です!
書記官は、それぞれに担当する事件があるのですが、異動初日から事件に関しての問い合わせが容赦なく来ます。
もちろん異動したばかりなので、担当する事件の内容なんて把握していません。
異動してきたばかりなので、事件の内容を把握していないので、
折り返し連絡します。
という常套句を連発してその場をしのぎます。
「異動してきたばかりなので、事件の内容を把握していない」
って言っちゃいます。
異動してきた人、みな言ってます。
異動は、事務官も書記官もみんな大変です。
異動の規模ってどのくらいなの?
ここでは裁判所職員一般職で合格した場合の話をします。
一般職採用された人は、採用された高裁管内での異動になります。
※管内というのは、担当する地域のことをいいます。
https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/kankatu/index.html
最高裁のホームページに、「仙台高等裁判所管内」や「東京高等裁判所管内」とありますが、これが一般職の異動する範囲になります。
けっこう広範囲ですよね。
ですが、実際は都道府県ごとに採用されるので、基本は県内の異動になります。
県外異動できるのは、
・結婚した
・書記官に任官した
・管理職に昇進した
といったような限られた場合です。そういった場合でも、高裁を飛び越えての異動はありません。
例えば、東京高裁管内を飛び越えて名古屋高裁管内に異動、ということはありません。
管理職になった場合は。ほぼ県外に行きます。
県内だと、
「自分がヒラの職員だったころを知っている人がいるからやりにくいだろう」
ということで、昇進時に県外に行かせると聞いたことがあります。
本当かどうか、理由はさておき、管理職に昇進イコール県外異動、となります。
広域異動を希望しない場合は、異動面談の際に、「広域異動は嫌です」としっかり希望は伝えましょう。
高裁を飛び越えての異動もできるが、戻れない。
先ほど、高裁管内を超えての異動は無いと言いましたが、絶対にできないわけではありません。
しかし、結婚や介護などの特殊事情に限られます。
実際に結婚という事情で東京から仙台に行った一般職採用の書記官や、福井から東京に来た事務官を見ました。
しかし、一度高裁管内を飛び越えての異動をすると、「異動前の高裁管内に戻してほしい」「また別の高裁管内に異動したい」と言っても難しいと言われています。
なお、裁判官や家庭裁判所調査官は全国異動です。
東京の次は福岡や北海道なんて、普通にあります。
もし結婚していると、どちらかが仕事を辞めるか、単身赴任をするかということになります。
しかし、裁判官同士で結婚している人で、同じ県内に異動になった人もいるので、いちおう個々の事情を聞いてはくれるようです。
裁判官と書記官で結婚している人もいますが、その人達は、片方が単身赴任していたり、書記官が退職したり、家庭によって様々です。
異動先の希望って言えるの?
異動については、裁判所では異動面談というのがあります。
そこで、
・どんな仕事をしたいか
・どこに行きたいか
・異動できない場所や事情はあるか
ということを聞かれます。
あくまで希望なので、その通りになるとは限りません。
まあ、だいたい思い通りにならないと思っていた方がいいです。
人事の人いわく、
人事は水物(みずもの)だからね
だそうです。
※みずもの…運や状況に左右されやすく、予想が立てにくいもの。
異動の際には、打診があります。ここどうですか、という打診ですね。
一般職の異動の打診が2月の半ばくらいから始まるので、にわかに周囲がソワソワし出します。
異動の打診は、ひとりひとり別室に呼び出されて行われるので、仕事中に直属の上司から何か耳打ちされた人が、執務室から出ていくと、
おっ。あの人異動か?
となります。春の風物詩ですね。
そして、職員の異動が固まると、晴れて職員全員に周知されます。
これを、みなさん「異動がオープンになる」と言っています。
省庁によっては、そういう内示もなく、異動がオープンになって始めて自分の異動先を知る、というところもあるようです。
検察庁は、オープンになって初めて自分の異動先を知るパターンだそうです。検察事務官談です。
一方、裁判所では異動の打診を断る人もいます。
大体の人は異動の打診を受け入れますが、断る人もいます。
でも、拒否しすぎて挙句の果てに居座り続けて懲戒処分を食らった人もいますので、ほどほどに。
私は、いまのところ異動を断ったことはありません。だからと言って、希望が全部通ったわけでもありません。
正直、仕事内容は嫌だけど任地は希望していたとこだからな~
というキモチになったこともありました。
異動は書記官も事務官もドキドキ
異動は基本的には4月ですが、管理職は8月に異動することもあります。
また、書記官任用試験で書記官になると10月に異動することもあります。
いずれにせよ、初めての場所に異動するときは緊張します。
仕事をちゃんとできるかな?
その部署に馴染めるかな?
どんな人がいるかな?
などなど、心配になると思います。
でも、皆さん優しいので、ちゃんと教えてくれますし、配する必要はありません。
わからなければ、聞けば教えてくれます。
私は、未経験の仕事の場合、必ず、
この部署は初めてです!やったことありません!
といったように、未経験をアピールしまくってました。
そうすると、周りのひとは、私が分からないという前提で話をしてくれるので安心ですし、
「それってなんですか?」
いけしゃあしゃあと聞くことができます。
それこそ、先ほど話した「こんぴ」ってなんですか??です。
当然のように使われている「こんぴ」について、「こんぴって何ですか?」と聞くことで、周りの人は、
「そうか、“こんぴ” が分からないのか」と気付いてくれます。
そんなこんなで、私はどんどん聞いて、できる仕事を増やしていきました。
皆さんも、どんどん聞いて、調べて、できる仕事を増やしていってほしいと思います。
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