一時期流行った裁判所の名を騙った詐欺メールや詐欺のはがき。
連絡しないと財産を差し押さえるぞ!と脅して連絡をさせようとしてきます。
ですが、その詐欺メールやはがきにもつっこみどころはあるのものです。

不審な電子メール
「期日呼出状が携帯のメールアドレスに届いた。」
まず、裁判所は紙です!なにをやるにも紙!紙!そして印鑑!!はんこ!押してね!☆
私も採用されたてホヤホヤのとき、あまりの紙の多さと印鑑の必要さにドン引きしました。今でもドン引き継続中。
今現在、裁判所職員に振り分けられているメールアドレスで外部と連絡を取ることは禁止されています。
もちろん例外はありますが、少なくとも民事部・刑事部では外部にメールを送ることは禁止です。
なので裁判所からメールで呼出状が来ることはありません。
だいいち、裁判所は訴状などを送る際に「特別送達(とくべつそうたつ)」という形で郵便を送っています。
特別送達というのは書留よりも厳格な形で、誰に渡したかまで郵便局員が確認しています。
何年何月何日何時何分、誰に渡した、その人は本人か同居人か…ここまで送達報告書というものに細かく書かれています。
ちなみに裁判所は「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」というものを送っています。
答弁書催告状というのは「答弁書出してね」というもので、訴状、呼出状と一緒に答弁書のひな型も同封しています。
ですので、呼出状単体が来ることはありません。(だたし、一度訴状を送った後に出頭してこない場合は、次回の裁判の日にちのお知らせとして呼出状単体が送られることはあります。)
不審なはがき

以前よりも件数は減ってきていますが、こんなはがきが届いているようです。
まず、民事訴訟管理センターなんてありません。ほかにも法務省管轄支局だとか裁判所管理局と名乗っているものもあるようですが、そんなものありません。
そもそも裁判所は法務省管轄じゃありませんー(・´з`・)
でも知らない人だと、裁判所や法務省って書かれるとびっくりしますよね。
- 「貴方の未納されました総合消費料金について契約会社、ないしは運営会社」
どこの会社か教えてください。わかりません。
総合消費料金って何を請求してるんです??裁判所もさすがに何を請求してるのか分からないと訴状直させますよ。
- 「訴状の提出をされました事を御通知致します。以降、下記に設けられた裁判取り下げ最終期日を経て訴訟を開始させて頂きます。」
訴状を提出したのに取下げ最終期日を経て訴訟を開始させていただきますってどういうことですかね??
- 「裁判取り下げ最終期日を経て」
取り下げるのはお前や。
訴訟を取り下げるのは原告であって被告ではありません。
訴訟やります!って言った方が、やっぱりやめます!というのが通常だと思います。
被告が、なにをどうやったら取下げられるんですかね。
- 「裁判取り下げ等の御相談に関しましては」
だから取り下げるのはお前や。
- 「裁判所執行官による「執行証書」の交付を承諾して頂くようお願いする」
執行証書って公証人が作成する書類です。執行官関係ないがな。
- 「債権譲渡証明書を一通郵送させて頂きますので」
なぜここで債権譲渡が出てくるのかが分からない。考えたけど分からない。私の知識不足??
私も民事訴訟を担当するようになってから、このはがきの文言のおかしさに気づきました。
と同時に、文章の内容が明確でないから確認したくなります。
だから、知らない人が慌てたり不安になるのも無理ないと思います。
やはり一番は、書いてある電話番号じゃなくてインターネットで調べた電話番号に電話をするのが安全ですね。
ほかにも。
「裁判所から郵便を発送したが宛先不明で戻ってきたから住所を教えてほしい。」
「裁判員に選ばれたので書類を送ったから必要事項を記入して送り返してほしい。」
という電話もあるようです。
- 「裁判所から郵便を発送したが宛先不明で戻ってきたから住所を教えてほしい。」
まず、「書類を送ったからね~」と裁判所は電話をしませんし、自分から何か手続きをしている人でない限り、「あなたの住所教えて~」なんて電話もしません。
民事訴訟で被告の住所宛ての郵便物が戻ってきたら、住所を調べるのは原告の役目です。裁判所は調べません。
- 「裁判員に選ばれたので書類を送ったから必要事項を記入して送り返してほしい。」
裁判員に選ばれるのも、知らない間に「裁判員の候補者」に選ばれることはあっても、「裁判員」に選ばれることはありません。
裁判員に選ばれるのは選任手続きに呼ばれて、くじで選ばれます。
書類を送られるのも、候補者になったら送られます。「裁判員できますか?」というような内容です。
それでも電話はしません。
基本は無視でOKですが…
常にいろいろなところで言われていますが、こういう変な(「変」と気づけるかどうかはおいといて)はがきや封書、メールは無視でOKです。
しかし、裁判所からの特別送達の郵便を無視するとやばいのでそこは注意です。
無視していると、原告の勝訴になって本当に財産を差し押さえられる可能性があります。
例として、根拠のない支払督促を裁判所に申し立てて、心当たりがないという理由で相手が無視しているのをいいことに、適法に強制執行してきた、という手口を聞いたことがあります。
ふむふむ。「裁判所からは特別送達で来るのか~」と思っていると、封筒に「特別送達」と書かれた郵便物が来ることもあるらしいです…
でも先ほど書いたように、特別送達は対面での受け渡しになります。ポストに投函ではありません。そこは注意ですね。
手を変え品を変え、詐欺は日々進化しています。ほんとに。
オレオレ詐欺もそうですが、お金!と言われたら詐欺かな?と思うくらいがちょうどいいと思います。
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