勾留請求
勾留請求は、検察官が、被疑者を引き続き拘束することについて裁判官に許可を求める手続きのことをいいます。
勾留請求が出ると裁判官は勾留質問という手続きを行います。
勾留質問というのは、被疑者を引き続き留置施設に留め置くかどうかを判断するために、裁判官が被疑者本人から話を聞くことです。
勾留請求が来ると、必ず勾留質問をしなければいけません。
検察官から勾留請求があると、裁判官は検察官から提出された記録を確認します。この段階で被疑者を勾留するか釈放するかを決めていることが多いです。
ですが、裁判官も判断に迷って、「被疑者から話を聞いてからどうするか決める」ということもあります。
勾留請求は、平日も休日も関係なく来ます。夜に来るということはありませんが…
普段は勾留請求を処理する専門の部署が行いますが、休日は日直の職員が担当します。なので、普段刑事の仕事をやっていない書記官が勾留請求を処理することになります。
もちろん事件処理をするためのマニュアルはありますが、普段刑事の仕事をしていない人からは「刑事の仕事は怖い」とよく聞きます。刑事の仕事はミスすると被疑者や被告人が被る不利益が大きいからです。
書記官が行う仕事は、
勾留状を作成→勾留質問に立会う→勾留質問調書を作成→勾留請求の書類を検察官に返却
というものです。
ちなみに被疑者は、勾留されると決まったときに「勾留された」ことを連絡してもらうことができます。
この連絡は、書記官が電話か手紙ですることになります。通常は被疑者の両親や兄弟などが連絡対象なのですが、最近は会社の上司や友人・知人なども多いです。
不服申し立て
勾留(もしくは勾留請求の却下)に対する不服申し立てを準抗告(じゅんこうこく)といいます。省略して、準抗(じゅんこう)と呼んでいます。
ちなみに第1回公判期日を終えていない被告人の保釈請求が認められた(却下された)場合に出される不服申し立ても準抗告です。(第1回が終わった後に出される不服申し立ては抗告(こうこく)といいます)。
勾留になると弁護人から不服申し立てがあり、勾留請求却下に対しては検察官から不服申し立てがあります。
必ず準抗告があるわけではありませんが、最近は準抗告の申立ては増えてます。
これが出ると、担当する刑事部や書記官は結構大変です。
自分がやっている仕事に加えて急ぎの仕事が来るからです。
書記官がやる仕事は、ざっくり書くと、検察庁から記録を借りてきて、裁判官が作った決定書の内容を点検し、検察庁に記録を返し、決定書の発送をする。
です。
これだけ見れば、書記官がやっていることは難しくないのですが、普段の仕事に加えて急ぎの仕事が割り込んでくるので、自分の仕事のリズムが崩れるんですよね。
記録を持ってきたあとは、裁判官の決定書が完成するまで他の仕事ができるのですが、その決定書の点検も割り込んでくるので、やっぱり仕事のリズムが崩れるんですよね。
法廷の立ち会いがあるときは他の人に処理をお願いしますが、そうでなければ最優先で処理することになります。
つらい…(´・ω・`)
17時以降の申立て
日中に申立てが来ればまだいいのですが、17時以降に申立てがあることがわりとあります。
それは、勾留請求自体が遅かったり、勾留質問が終わるのが遅かったりするからです。
裁判官は勾留請求の記録を見ないといけないので、勾留請求があったらすぐに勾留質問をはじめられるわけではないからです。
特に勾留請求が遅いと、すべてが遅くなるんですが、これって良くないと思うんですよねぇ…。被疑者も待たせてるし、場合によっては通訳人も待たせることになりますからね。と言うと、裁判所だって判断出すの遅いじゃないかと検察庁に怒られそうだなぁー
準抗告の当番になると、勾留質問が終わるまで待っていないといけないので、残業になることがあります。
自分の仕事があれば仕事をしながら待っていればいいのですが、仕事が終わっているのに勾留質問が終わるのを待っているというのは苦痛です。
特に、17時以降の検察官からの準抗告の連絡はキツイです。検察官が準抗告すると決めると電話で連絡してくれます。それが17時過ぎていると地獄です。
準抗告となると、検察庁内部での申立書の決裁などがあってどうしても時間がかかるからです。
検察官が準抗告するということは、勾留請求が却下されたことになるので、そのままだと被疑者を釈放しないといけません。
ですから、検察官から準抗告すると連絡があったら、担当部は申立てがあるまで待って、その日に判断をしないといけません。
自分の仕事は終わってるのにいつ来るか分からない準抗告を待つ時間…
つらい…(´・ω・`)
準抗告があったというニュースを見ていると、夜に勾留請求却下に対して不服申し立てがありました、という報道がされることがあります。
ニュースになるということはそれだけ有名人だったりするのですが、見ているこちらは、「うわぁ…書記官大変…」と思うわけです。
ちなみに準抗告は勾留に対するものだけではなく、接見等禁止(弁護士以外と面会ができない)に対してのものや保釈請求に対するものもあります。
前回ちょっと話題に出した、カルロス・ゴーン氏の勾留請求や保釈請求に対しても準抗告が出ていて、そのときも「あぁ…担当書記官がんばって…」と思ったものです。
支部の準抗告
準抗告は、裁判官3人で構成される合議体(ごうぎたい)で判断しないといけないのですが、支部によっては合議体が組めない支部もあるので、勾留の処理はするけど準抗告は本庁が処理をする、ということもあります。
自分の庁の勾留請求の状況や準抗告の状況を見ていたら、急に後ろから殴られる感じです。
つらい…(´;ω;`)
なので、勾留をした支部は検察官の準抗告申立てを待って、申立てが出たら裁判所の職員が本庁に記録を持っていく。本庁はそれをひたすら待ち続ける。
ひたすら待ってます (# ゚Д゚)
つらいを通り越して腹が立つ(# ゚Д゚)
勾留処理するなら最後まで責任持ってよ!!! (# ゚Д゚)ピキピキ
まとめ
勾留に限らず、接見等禁止も保釈も、被疑者や被告人の身体拘束に関わるものなので、それに対する不服申立てというのはとても重要なものですし、私もそう思います。
準抗告も重要ですし、それを処理することについては不満はないのです。
不満なのは「待ち時間」です。ピキピキ
ですが、だからといって勾留の処理を適当にするわけにもいかない。そもそも裁判官が判断することですしね。
こればっかりはどうしようもないのかなぁ~と思いながら仕事をする毎日です。
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