全部読んだ人はいないと思うし、全部覚えてる人は皆無だと思います。(身も蓋もない)
「六法全書を全部読んだ」という詐欺の話
思い出した話なのですが、ずっと前に、
「私は六法全書を全部読んでいる。あなたのした行為は犯罪に当たる」
と言って、金をだまし取ろうとした事件があった
というニュースを見ました。
当時は「ふーん」としか思わなかったのですが、最近そのニュースを思し出しました。
今から思うと、ツッコミどころ満載なんですよね。
今なら、私、こう言っちゃいます。
え?
六法全書を全部読んだんですか?
すごいですね!
ちなみにどこの六法ですか?
有斐閣?三省堂?
ポケット六法?デイリー六法?
判例六法?模範六法?
+(0゚・∀・)+ネェネェ!
なんて、実際そんな人に遭ったら、あっヤバイ奴だ…と思って全力で逃げますけどね。
そもそも法律は、六法を読めばいいだけではなく、定義や解釈などを実際の事案に当てはめて物事を判断していくので、
六法を読んだからと言って、すべてが解決するわけじゃないんです。
例えば
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役または五十万円以下の罰金に処する。(刑法235条)
という窃盗罪ひとつとっても、
保護法益はなにか?
財物ってなに?
窃取とは??
そもそも構成要件該当性は?違法性は?責任は??
などの過程を踏んで、初めて犯罪として成立するのです。
法律を勉強している人なら「それは窃盗罪にあてはまりますね。」
となると思いますが、窃盗罪に当てはまっても、違法性が無いかもしれないし責任が問えないかもしれないなどなど…
いろいろな事情があるので、その場で処罰はできないのです。
だから裁判をするのです。
おそらく、示談金としてお金を詐取しようと思ったのかもしれません。
定義などもすべて分かっていたとしても…いや、これは分かっていない人の物言いな気がする。
「六法全書を全部読んだ」って…笑
なので、六法全書を全部読んだからと言って、全てが分かるわけではないのです。
この事件で考えたこと
正確には、「この事件を思い出したことで考えたこと」ですが、
法律の勉強ってそういうものなんですよね。
かつては、
定義ってなんやねん!難しい言葉使っちゃってさー!
とか、
保護法益なんていちいち考える必要ある!?
と、思っていました。
しかし、書記官になるための試験の勉強をしていると、
定義や保護法益が分からないと、そもそもその犯罪を構成するのかも分からないし、
犯罪の要件を明らかにして、それを事案に丁寧に当てはめていって、答えを出していくのが法律なんだなぁ
と気付き(気付くの遅い?)、そこで改めて、「法律って面白いなぁ」と思いました。
初心に帰った気がしました。
実務では答えを出さないといけないので判例重視ですが、学者はそうではないですからね。
今ならそういう授業も面白く感じるのかもしれない…と思う今日この頃。
余談~大学の授業は面白くなかった…
自ら進んで法学部に行ったのに、あんまり面白くなかったんですよね。
面白い授業もありましたが、
今にして思えば、「答えを教えてくれない」から、面白くないと感じたのかもしれません。
法律番組でも何でも、答えが用意されていますよね。
でも、大学の授業は、いろんな学説を教えてくれるけど、答えがないことが多々あると思います。
「この説ではこういう考え方をしますけど、一方の説は違う考え方をしますね。」
どいう感じで、
「え!?オチは!?」と思ったものです。
大学の授業が面白くなかったのは、
答えが無くて、この授業で何をしているのかが理解できないし、
やたらと難しい学説の話ばっかりで理解できないし、
答えがなくてボヤっとしていた、からなのかと思います。
いろんな学説を知って、それを基にあーだこーだ議論していくのが勉強だったのかな、と今だと思います。
しかし当時はそんなこと全く思わず、「結局答えは何よ!?」と思っていました。
でもやっぱり面白い
大学では、いろいろな学説を勉強して「全くわからん!」となっていましたが、
公務員試験の勉強をして、初めて「判例を重視する」という勉強法を教わり、
「やっぱり法律って面白いな」と思いました。
書記官の論文試験は、定義や要件を当てはめていって答えを出していくものなので、勉強は大変だったけど面白かったです。
今なら、大学の授業も面白く受けられるのかもしれません。
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