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訴状が届いていないのでコメントできません。

民事訴訟を起こされた企業などが、テレビでよく「訴状が届いていないのでコメントできません」と言いますね。

どうしてみんなそういう回答をするの?と疑問に思うかもしれません。

今回は、なぜ「訴状が届いていないのでコメントできません」と答えるのかについてお話します。

目次

本当に訴状が来ていない

訴状は、裁判所で受け付けられても、その日のうちに被告に対して発送するわけはありません。

訴状が提出されると、その日に担当する部署が決められます。

受付の係が訴状を受け取りますが、その部署に配られるのは基本的に翌日になります。

受付でどの部署にするかを決め、訴状の内容を軽くチェックします。

翌日に担当部署に配られると、その部署内でどの裁判官が担当するかが決められます。

書記官が中身を見て、問題がある場合は原告に直させます。これを補正ほせいと言っています。

補正がされるまでは、訴状は被告に送ることができません。

ですので、被告に届くのは先になります。

さらに言うと、その事件より前にきた事件があればそれを先に処理しますから、当然訴状が届くのは先になります。

期日の打ち合わせ

問題なくても、被告にすぐ送るわけではなく、原告と日にちの打ち合わせをします。

民事事件では、期日の打ち合わせをするまでに、長いと1カ月近くかかることもあります。

原告と都合のいい日を決めたら、期日を指定して、そこで初めて被告に訴状口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状というものを送ります。

口頭弁論期日呼出状こうとうべんろんきじつよびだしじょう」は、「この日この時間ここの法廷で裁判を開くから来てね」というものです。

答弁書催告状とうべんしょさいこくじょう」というのは「答弁書出してね」というもので、答弁書のひな型も同封しています。

先ほど「原告の都合のいい日を決めたら」と書きましたが、被告の都合は聞きません。

被告は、呼び出された日の都合が悪ければ、答弁書を郵便で提出しつつ、次回の都合のいい日を答弁書に記載して、当日は欠席することになります。

欠席しても、答弁書を出しているので当日に結審することはありません。

たまに原告に弁護士がついていて「期日の打ち合わせのときに、被告側の代理人にも都合のいい日を聞いてほしい」と上申書が付いていることがあります。

そのときは、被告側の都合のいい日も聞いて、裁判の初日に原告側と被告側が揃う、ということもあります。

すこし話が逸れましたが、こういう流れになるので、訴状が提出された日に、

「訴えられましたけど、どうですか?」と聞かれても、

「訴状が届いていないのでコメントできません」となるわけです。

しかも、訴状が届いていないと内容も分からないので答えようがありません。

さらに言うと、訴状が届いて初めて被告は訴えられたと知るわけですから、本当に訴えが起こされたかどうかは、訴状が来ないと分からないのです。

訴状が届いたら?

じゃあ届いたあとに聞いたら答えてくれるのかしら?

と思うかもしれません。

私も、昔は「訴状が届いたら答えてくれるの?」と思ったこともあります。

これは私の想像ですが、おそらく「係争中なので回答は差し控えます」というような回答になるのではないでしょうか。

法廷でされた発言や提出された証拠が判決の基礎になるので、報道機関に回答をしてもそれが判決に影響するわけではないですが、

万が一、自分側についている弁護士や経営陣等との方針と違うことを答えると、それはそれで問題になると思います。

だから余計なことは言わないのだと思います。

別に曖昧にしているわけではない、と思います

民事裁判は、実際に被告に訴状が届くまで時間がかかります。

しかも、報道などで「こういう内容の訴えだ」と言っていても、実際に訴状が来ないと被告は分からないのです。

なので「訴状が届いていないのでコメントできません」と言われても、そんなに怒らないでくださいね。

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