前回の記事では、裁判所っぽい仕事はあまり出て来ませんでした。ゴメンナサイ。
民間の会社でもあるような仕事が多かったと感じたかもしれません。
この記事では、ちゃんと裁判所っぽいお仕事の紹介をしますよ。
よろしくお願いします。
刑事部の事務官の仕事
刑事部にもいろいろな部署があるので、すべての刑事部の事務官がこの仕事をしているわけではありません。
今回は、よくテレビで見るような裁判をしている部署を例にしてご紹介します。
刑事部の事務官の主な仕事は、以下のとおりです。
- 新件処理
- 勾留更新
- 期日指定
- 裁判員裁判
- 検察庁へのおつかい
新件処理
新件処理とは、裁判所の事件係(受付のような部署)から引き継がれた起訴状を点検し、起訴状を被告人に発送できる状態にして書記官に引き継ぐことです。
点検なんて難しくない?
と思うかもしれませんが、チェックリストがあるのでそれを見ながら点検できます。
部署にもよりますが、少ないときは新件が1件だったり、まれにゼロだったりすることもありますが、年末などの長期の休みに入る前は大量に起訴があります。
引き継がれた事件が10件を超えると、勤務時間内に処理を終えるのが難しくなってきます。
新件処理だけならそんなに時間かからないんじゃない?
と思うかもしれません。
しかし、新件を処理するよりも優先的にやらなければならない仕事(勾留更新)もあります。
勾留更新が終わって、「さて新件処理をしよう」と思って、せっせと作業をしている間にも、
電話がかかって来たり
窓口に人が来たり
証人を法廷に連れて行ったり
郵便の準備をしたり
作業が中断することもよくあります。
新件がたくさん来ると、丸一日かけて作業をするということもあります。
翌日とか翌々日に仕事を回したらいけないの?
刑事事件では、
1 裁判所は、公訴の提起があつたときは、遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達しなければならない。
刑事訴訟法271条
2 公訴の提起があつた日から二箇月以内に起訴状の謄本が送達されないときは、公訴の提起は、さかのぼつてその効力を失う。
つまるところ「さっさと起訴状謄本を被告人に送りなさい」決められているので、起訴状だけはさっさと送らないといけないのです。
あまり遅くなるのはいけません。
仮に翌日や翌々日に仕事を回したとしても新しい事件はどんどん来るので、自分の首を絞めることになります。
忙しいときは書記官も手伝うから安心してね。
勾留更新
刑事部の仕事で一番重要と言っても良い仕事。
勾留更新
刑事事件では、身柄を拘束されている被告人が多いのですが、身柄を拘束できる期間が決まっています。
勾留更新は、身柄の拘束期間を延長するという手続きです。
勾留更新を忘れると、釈放してはいけない被告人を釈放することになります。
そうなると、検察庁を巻き込んでの大問題になります。
事務官として入って、一番最初に教わったのが勾留更新でした。
勾留更新は刑事部の中でもかなり重要な仕事なのです。
現在は、刑事部で使っているシステムで、身体拘束が終了する日は自動で計算してくれますが、それが正しいのかを確認するのも事務官の仕事です。
本来は書記官の仕事ですが、事務官にお願いしているのです。
まさに書記官補助事務ですね。
勾留更新は、どの部署の事務官も任されている仕事です。
刑事部の場合は勾留更新に加えて、保釈(拘束の解放のこと)などの身柄変動があるので、そもそも勾留更新をしていいのかどうかも、事件の記録を見ながら確認をしないといけません。
これって勾留更新していいんですか?
というような確認を書記官に対してできるようになるとバッチリですし、書記官としてもありがたいです。
期日指定
これは、刑事・民事・家事、どの部署でも共通の仕事です。
裁判を開く日時のことを、裁判所では期日と呼びます。
期日って締め切りのことじゃないんだね。
法廷は、各部署に割り当てがあるので、自分たちが使える法廷が空いているかを確認します。
刑事事件は、基本的に1つの事件につき1時間枠で期日を入れるので、時間が被らないように注意します(追起訴と言って、まだ起訴が続くような場合は30分枠で期日を入れることが多いです。)。
検察官は担当する曜日も決まっているはずなのに、たまに「その日は空いていないです」と言ってくることもあります。
なんで空いとらんのや!
と思ったり思わなかったり思ったり。
そして、空いている時間をいくつか候補に挙げて、検察官と弁護人の予定を電話で確認し、裁判長に決裁のハンコをもらって期日を指定します。
期日を決めたら、被告人に公判期日召喚状という書類を送り、検察官と弁護人に期日の連絡をします。
この期日指定の関係者への連絡も書記官の仕事なのですが、部署によっては事務官に任されていることもあります。
裁判員裁判
刑事部では、基本的に一般の人と関わることは少ないのですが、そんな刑事部で一般の人と多く関わるのが、裁判員裁判です。
裁判員裁判において事務官が行う仕事はこのようなものです。↓
実は、かなりやることがあります。
評議室の事前準備や、お弁当注文の取りまとめと代金回収、裁判員が帰ったあとの評議室のごみ捨てやお茶などの補充も仕事のうちです。
裁判員が選ばれたら、評議室に案内し、評議室の使い方、法廷の場所などを説明します。
午後5時を過ぎても裁判や評議が続いているときは、日当も変わってくるので、その日の裁判が何時に終わったかも確認しないといけません。
普段の仕事にプラスされるので、裁判員裁判が行われているときは事務官だけでなく、部全体としても忙しくなります。
裁判員裁判中は、定時で帰るのが難しいこともあるよ。
検察庁へのおつかい
刑事部の事務官のお仕事で忘れてはならないのが、検察庁へのおつかい です。
検察庁に裁判所からの書類を届けたり、検察庁から記録を借りに行くお仕事です。
検察庁には1日に何度か行くので、検察庁にる守衛さんと顔見知りになってきます。
顔見知りになるくらい検察庁に行きます。
検察庁に入るには入館証が必要なのですが、何度か入館証を忘れたことがありました。
ですが、1日に何度も検察庁に行くので、顔パスで入ったことが何度かあります。
たまに台車を押しながら大量の事件記録を検察庁から借りたときも、守衛さんから
「大丈夫~?」
なんて声をかけてもらったりすることもありました。
検察庁に行くタイミングは部によりますが、午前10時くらい、午後3時くらい、という程度でゆる~く決まっています。
が、その他にも急ぎで持って行くものがあれば、別途行きます。
なので、急ぎの書類があると、検察庁から帰ってきてすぐに検察庁に行く、ということがよくあります。
事務官時代は「めんどくさ~」と思ったこともありますが、書記官になると、「いい気分転換だったなぁ」と思うこともあります。
別に書記官が行っても良いんだよ
気分転換に検察庁に行く書記官もいたよ
事務官なくして書記官なし
事務官でも結構やることがたくさんあり、紹介していない細かい仕事もあります。
以前、裁判官と書記官は車の両輪のようなものという話をしましたが、事務官も無くてはならない存在なのです。
事務官が有給休暇で不在だと、書記官がてんやわんやすることもよくあります。
事務官は、裁判所にとって、とても大事な存在なのです。
つまり三輪車だね!
コメント
コメント一覧 (3件)
いつも投稿楽しみにしています。
私も臨任としてお世話になったのが地裁刑事部だったので、ある意味懐かしく、また裁判員裁判は未知の世界だった頃なので新鮮に感じたり。。。
勾留更新、地検令状課に持っていくときに、一週間交替だったかで、お向かいの部屋だった他部さんの分も取りまとめて持って行くなんてこともしていました(今ではあり得ないのかな)。
私はあくまで臨任だったので、国家公務員でもない身分で色々なところに行ったり、経験したりが楽しくもあり大変だったのもあり・・・でした。
もう人一人が成人するぐらい経過している・・・懐かしい。
コメントありがとうございます。
勾留更新はとりまとめていたんですね。
今は各部がそれぞれ持っていく形になっています。取りまとめるとたぶん大変なことに(;^ω^)
長いこと勤めている人に話を聞くと、割と緩くやっていた印象がありますね。
いい加減な仕事は良くないけど、緩い雰囲気は羨ましいなぁと思うこともよくあります。
こちらこそ目を通してくださってありがとうございます。
確かに20年ほど前(キャッ!年齢がバレる)となると緩いかもしれませんね。裁判官室の冷蔵庫に缶ビー〇が置いてあるとか。
今の刑事部の様子も見てみたいですね。
私は伝説の山〇裁判官の下でお世話になっていたので、なかなか面白い経験をさせていただきました。
また刑事部小話、聞かせてください☺