刑事部とは全然違う仕事もありましたね。
今回は家事部のお仕事のお話です。
刑事部と民事部とはちょっと毛色が違うかも?
心してかかります!
家事部の事務官の仕事
家事部の事務官の主な仕事は、以下のとおりです。
- 新件処理
- 調停官と裁判官の事件の振り分け
- 期日指定
- 調停委員の指定
すべてではありませんが、代表的な仕事はこのような仕事です。
家庭裁判所も、部署が本当にたくさんあるので、ほんの一部の紹介になってしまいますが、
家事調停係の事務官のお仕事を紹介します。
なお、調停とは話し合いのことで、非公開の手続きなので一般の人は見ることができません。
新件処理
はい、どこにでも登場する新件処理。
事務官の代表的な仕事だからね。しょうがないね。
こちらも、事件の受付係から申立書が引き継がれてきます。
家庭裁判所では、申立書と呼んでいます。
刑事では起訴状、民事では訴状、そして家事では申立書、といったように、呼び方が変わります。
担当書記官を決めるのも刑事や民事と同じですが、家裁ではここで家庭裁判所調査官のインテークに回します。
いん…?
インテークだよ
インテークとは手続選別といって、申立書の内容を見て家庭裁判所調査官が、
当事者同士が直接会わないようにしたほうがいいか や 家庭裁判所調査官が第1回の調停から関与するかどうか
ということを申立書を見て、裁判官に意見します。
裁判官は、それをみて事件をどう進行させていくかを決めます。
事務官は基本的に裁判所調査官に記録を持っていくだけですが、調停事件は新件がかなり多く来ますし、今後の事件の進行にも関わってくるので、大事なお仕事なのです。
家庭裁判所調査官って?
ここで、ちょっと簡単に家庭裁判所調査官のお話です。
家庭裁判所調査官は、対立している当事者に子供がいると、高確率でその事件に関与します。
なんでそんなことをするのかというと、
調査官は、裁判官に行動科学の知見を提供することを主な仕事としている職員で、
仕事をしていく中で、家庭訪問をして子供の様子を調査したり、
子供が通う学校の担任や校長先生から話を聞いて、子供の生活状況,健康状態,発育状況を調べたり、
子供本人実際に話を聞いて子供の意向を調査したりします。
こうして、よりよい解決に向けて、調査官が最初から関わった方が良いかどうかを、一番始めの段階で確認するのです。
調停官と裁判官の事件の振り分け
家庭裁判所には裁判官、家庭裁判所調査官のほかに、調停官という人がいます。
調停官とは、簡単に言うと、弁護士として働いている非常勤裁判官です。
弁護士なのに裁判官なの?
そう、本業は弁護士なんです。
調停官になりたい!と応募をして、5年以上の経験を持つ弁護士の中から任命された、非常勤職員です。
非常勤なので、裁判所には週に1回来ます。
裁判官と同等の権限が与えられていますが、権限のない仕事もあるので、そこで事件の振り分けが必要になります。
話し合いがつかなければそれでおしまい、という事件の類型は調停官に振り分けて、
話し合いがつかない場合は裁判官が強制的に結論を決める、という事件の類型は裁判官に回す、という感じです。
これは、事件の類型の知識がないと説明が難しいので、細かいことは割愛します。
ぼくも知識がなかったので苦労しました。
家事調停事件は、いろいろな終わり方があるので、それに合わせて裁判官と調停官のどちらに振り分けるのかを判断していくのです。
期日指定
またまた出ました、期日指定!
ここまで読んでくれた皆さんは、もう何をするかわかりますね。
そう、当事者との打ち合わせです。
家事調停事件も申立人の予定しか聞きません。
ちなみに、家事調停では申し立てた側の人のことを「申立人」と言います。
民事でいうところの「原告」ですね。
家事調停は、調停室という個室で行われます。家庭裁判所には調停室がたくさん用意されています(むしろ、法廷の数の方が少ないです。)。
ここでも、係ごとに割り当てられている調停室があるので、1事件につき1時間30分枠で期日を入れていきます。(以前は2時間だったのですが、コロナの関係で短縮されています)。
期日が決まったら、裁判官に決裁のハンコをもらって期日指定をします。
ここでいつもの流れだと、郵便の発送という流れになりそうですが、それに加えて別の仕事があります。
それが、調停委員の指定です。
調停委員の指定
家事調停の特徴といえば、家事調停員です。
期日指定ができたら、調停委員に連絡を取って、事件を担当してもらえるか確認します。
調停委員ってどんな人かというと、
調停委員は,調停に一般市民の良識を反映させるため,社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人の中から選ばれます。
裁判所HPより引用
具体的には,原則として40歳以上70歳未満の人で,弁護士,医師,大学教授,公認会計士,不動産鑑定士,建築士などの専門家のほか,地域社会に密着して幅広く活動してきた人など,社会の各分野から選ばれています。
こんな説明がされています。
つまり民間の人に調停委員として話し合いに入ってもらい、よりよい解決方法を探していくお手伝いをしてもらっています。
調停委員は、当事者から話を聞いて、話の内容をまとめて報告したり、裁判官(もしくは調停官)と相談しながら、話し合いがまとまるように努力しています。
家事調停の場合は、夫婦間の揉め事が多いので、男性調停委員と女性調停委員という組み合わせになるようにします。
期日の日時を連絡して、調停委員から「事件を受けます」と連絡が来たら、裁判官に調停委員指定の決裁をもらって調停委員の指定が完了します。
余談ですが、簡易裁判所にも調停は行っていて、こちらは民事調停委員といいます。民事調停委員と家事調停委員を兼任することもできます。
なお、民事調停委員の日当や旅費の計算は事務官の仕事でした。
家庭の問題は、私情やら今までの恨みつらみやらなんやらが絡まりに絡まって複雑になっていることもあります。
その問題を、裁判官や調停官や調停委員や調査官などいろいろな人が関わって、一つの家族の紛争を解決するために奔走しています。
裁判所事務官の仕事は種類がたくさんあります。
刑事 | 民事 | 家事 | |
訴えた人 | 検察官 | 原告 | 申立人 |
訴えられた人 | 被告人 | 被告 | 相手方 |
分かりやすくするとこんな感じですね。
今まで刑事部、民事部、家事部の仕事を紹介しましたが、やることは結構似ています。
事件部から他の事件部に移動すると、用語はわからなくても仕事は共通していることが多いので、慣れると仕事はすぐに覚えられます。
期日指定と新件処理
は共通していましたね。
逆に、法廷で事件を審理しない部署。
例えば、終わった記録を管理する部署や、逮捕状などの令状をひたすら受け付ける部署などは、仕事がだいぶ変わってきます。
採用されての最初の一年は覚えることが多くて大変です。
覚えることは多いのに、「あれやって~これやって~仕事のやり方はこういうもので~」と言われると、
ムキー!
となることもあるかもしれません。
ぼくもムキー!
ってなってたよ
しかし、それを乗り越えると、二年目が楽になってきて仕事にも慣れて余裕が生まれます。
そして三年目には立派な先輩事務官の出来上がりです。
今まで記事で、裁判所事務官の仕事について「へぇ~そうなんだ~」と思っていただけたら嬉しいです。
コメント
コメント一覧 (2件)
いつもブログ読ませていただいてます!
他のサイトには載っていないような情報が書かれていて、とても参考になります🥺
いつもありがとうございます!
当事者対応や電話対応がとっても不安なのですが、やり方のコツなどはありますか?
コメントありがとうございます。
当事者対応・電話対応、どちらも不安ですよね。
コツになるかは分かりませんが、「分かりやすく説明する・専門用語は使わない」というのが一番です。
でも最初は「相手が何を言ってるのかさっぱり」だと思うので、
まずは、電話(窓口)に出る→担当書記官に投げる→「今のは何だったんですか?」と質問する、
をひたすら繰り返してください。
すると、少しずつ仕事が分かってきて、説明できることが増えて、自分でも対応ができるようになってきます。
当事者からの難しい問い合わせもあるので、そういうのはすぐに書記官や上司にぶん投げてください。
まずはちょっとずつから始めましょう。
新採用の特権でガンガン質問していきましょう。